Lize gardeningで光を測定してきました

Lize gardening(麗澤園藝)の看板と晴れた空

2026年10月9日から10月10日にかけてLize gardeningにアガベの仕入れに行ってきました。AgaveLivesで販売しているLize gardeningの株は、Lize gardeningで育成されている数万株のアガベから選抜して輸入しています。

10月のLize gardening(台湾)は日中で30℃オーバーと暑く、陽射しもかなり強かったです。その影響もあってかLize gardeningにあるオテロイも全体的に黄色味の強い色味になっていました。(冬に行くともう少し緑色に戻ります。)

今回、気候がかなり良かったのでLize gardeningでの光を測定し、どのような環境で育っているのかを調査してみました。

また10月11日に日本の晴れた日の同時刻(12時)の太陽光を同じ測定器で比較しました。

 

Lize gardeningで鉢に植えられて並ぶアガベと、奥の温室

Lize gardeningで育つ株。強い陽射しの下に並んでいます(10月9日の午前)。

測り方

  • 測定器: HOPOOCOLOR HPCS-330P(分光放射照度計)。350〜800nmの光を波長ごとに測れます。2か所とも同じ1台を使いました。ともに測定は同じ時間帯に複数回実施し、おおよそ安定した値であることが確認できたものを使用しています。
  • Lize gardening(育成所の2階): 2026年10月9日 12:00、晴れ
  • 日本: 2026年10月11日 12:00、晴れ

HPCS-330Pの測定画面。左が日本、右がLize gardeningのスペクトル

上は測定器の画面です。グラフの縦軸はそれぞれの測定の最大値を1とした相対値なので、そのままでは光の強度の比較はできません。ただ、このグラフでは、おおよそのグラフの形が同じ(=光の特徴(各スペクトル)がほぼ同じ)ということがわかります。

そこで、測定器が表示した最大値(日本 147.9、Lize gardening 209.6 µW/cm²/nm)をもとに、2枚を同じ目盛り(絶対値)に直しました。

測定器の画面を同じ目盛り(絶対値・µW/cm²/nm)に直した日本とLize gardeningのスペクトル

同じ目盛りにすると、Lize gardeningのほうが全体に高いことがわかります。日本のPPFDが1,837 µmol/㎡/s(照度99,052ルクス)、Lize gardeningのPPFDが2,549 µmol/㎡/s(照度138,400ルクス)となっており、Lize gardeningが日本の太陽光の1.4倍程度の強さがありました。

下の結果では、この2本を1枚に重ねて、光の粒の数(µmol/㎡/s/nm)で比べています。

結果

Lize gardeningと日本の正午の太陽光のスペクトルを重ねたグラフと、波長ごとのLize gardening÷日本の比(基準線はPPFDの比1.39倍)

UV・青・緑・赤・遠赤色の波長帯ごとの光の粒の量を日本とLize gardeningでくらべた棒グラフ

項目 日本 Lize gardening Lize gardening÷日本
PPFD(400〜700nm、µmol/㎡/s) 1,837 2,549 1.39倍
UV(350〜400nm) 77 128 1.66倍
青(400〜500nm) 501 725 1.45倍
緑(500〜600nm) 640 879 1.37倍
赤(600〜700nm) 696 945 1.36倍
遠赤色(700〜780nm) 535 735 1.37倍
照度(lx) 99,052 138,400 1.40倍
色温度 5,585K 5,819K ―

※光の量の単位はµmol/㎡/s(1秒間に1㎡に届く光の粒の数)です。

わかったこと

  1. 光の強さは、Lize gardeningが約1.4倍。 正午のPPFDは、日本が1,837、Lize gardeningが2,549 µmol/㎡/sです。照度では、日本が99,052、Lize gardeningが138,400ルクスです。
  2. 光の色のバランスは、ほぼ同じ。 2本の線はほとんど同じ形で、Lize gardeningが全体に上にずれています。株の伸び方に関わる赤(600〜700nm)と遠赤色(700〜780nm)の量の比も、日本1.30、Lize gardening 1.29で、ほとんど変わりません。全般的にLize gardeningでは日本の光の1.4倍となっています。
  3. UVは約1.7倍と、ほかの色より差が大きい。 晴れた空の計算では、2か所の光の色の割合はほぼ同じになるはずです。青・緑・赤・遠赤色がおおよそ1.4倍なのに比べて、UVのみ1.7倍となっています。

なぜUVの強さが違うのか

いちばん大きな理由は、太陽の高さです。12時の太陽の高さは、日本(東京で計算)が約47度、Lize gardeningが約60度となります。太陽が高いほど光は地面に正面から当たり、通り抜ける大気も薄くなります。UVだけ差が大きい残りの分は、空気の澄み具合や照り返しの影響も考えられます。

1日の光の量にすると

植物の育ち方に関わるのは、正午の一瞬の強さだけではなく、1日に届いた光の合計です。これをDLI(Daily Light Integral、1日の光の量)といい、単位はmol/㎡/日です。正午に測った値から、晴れた日のDLIを見積もってみました。

晴れた日の光は、日の出から少しずつ強くなり、正午ごろにいちばん強くなって、日の入りに向かって弱くなります。光の強さ(PPFD)を1日分グラフにすると、正午を頂上にした山の形になります。この「光の山の形」の面積が、1日の光の量(DLI)です。

晴れた日の光の強さの1日の変化を山の形で示した図。正午の強さが1日中続いた場合の長方形、サインカーブ、晴れた日の光の山をくらべている

もし正午の強さが日の出から日の入りまでずっと続いたとすると、光の量は「正午のPPFD×日の長さ」の長方形(図の赤い点線)になります。実際の光は朝と夕方に弱くなるので、山の面積はこの長方形より小さくなります。山の面積が長方形の何割にあたるか、が「係数」です。

  • きれいな山形(サインカーブ、図の黒い点線)なら、係数は約0.64(2÷π)です。
  • 実際の晴れた日は、朝夕の太陽が低い時間に、光が大気の中を長く通って弱まります。そのため山のすそが細くなり、係数は少し小さい約0.58〜0.59になります(晴れた空の簡易な計算モデルで、日本とLize gardeningの両方を計算しました。計算の根拠は最後の「参考文献」に載せています)。

式にすると、次のとおりです。

DLI = 正午のPPFD × 日の長さ(秒)× 係数 ÷ 1,000,000

1,000,000で割るのは、µmol(マイクロモル)をmol(モル)に直すためです。日の長さは日の出から日の入りまでの時間で、天気予報の「日照時間」(実際に日が照っていた時間)とは別のものです。

項目 日本 Lize gardening
正午のPPFD(µmol/㎡/s) 1,837 2,549
日の長さ(日の出〜日の入り) 11.47時間 11.75時間
係数0.64(サインカーブ)のDLI 48.5 69.0
係数0.58〜0.59(晴れた日の光の山)のDLI 44.0〜44.8 62.5〜63.6

※DLIの単位はmol/㎡/日です。

晴れた日のDLIは、日本が約44〜45、Lize gardeningが約63 mol/㎡/日で、Lize gardeningが約1.4倍です。差のほとんどは正午の光の強さ(1.39倍)によるもので、日の長さの違いは約2%(1.02倍)しかありません。12時の測定値を山の頂上とみなして、1日中晴れた場合を計算した概算です。

日本の秋冬は日が短くなり、曇りや雨の日も含めると光の量は上記の値から減ります。ともに雲がほとんどない晴天の日に測定しているため、上記のDLIは平均値と比べて大きめの値が出ています。また測定値は測定時の瞬間的な値のため、DLIは参考値として考えてください。光が特に強そうなタイミングで測定をしているので、実際のDLIの推定値は過去20年間の気象データからの平均値で算出した読み物「LED育成のススメ」を参考にしてください。

アガベを育てる方へ

Lize gardeningで陽射しを受けて並ぶアガベの鉢

Lize gardeningの株(10月9日の午前)。陽射しをたっぷり受けて育っています。

  • Lize gardeningの株は、日本の秋冬より多くの光を浴びて育っています。日本に来て発根させてからは、日当たりの良い場所で育成するのが基本です。
  • 光の色のバランスは大きく変わらないので、光という観点で見ると、日本において外での育成が難しいのは光の「量」の差です。(また、気温面でも日本の冬は台湾に比べて寒く、日本ではアガベの耐寒温度よりも低い気温となることもあり、外育成の難易度は高いです。)
  • 秋冬は日が短くなり、太陽も低くなるので、植物育成LEDで光の量を補うのも一つの方法です。距離と点灯時間の決め方は「LED育成のススメ」にまとめています。また、AgaveLivesでも植物育成LED「Agave Light 24W」と「Agave Light 32W」を扱っています。

参考文献

1日の光の量(DLI)の係数は、1と2の式を組み合わせた簡易な晴天モデル(空からの散乱光は簡単な仮定で足したもの)で計算しました。3の波長ごとの晴天モデルでも、ほぼ同じ値になることを確かめています。日の出・日の入りの時刻は4の方法で計算しました。

  1. Kasten, F. & Young, A. T. (1989). Revised optical air mass tables and approximation formula. Applied Optics, 28(22), 4735–4738. https://doi.org/10.1364/AO.28.004735(朝夕に光が大気の中を通る道のりの計算)
  2. Meinel, A. B. & Meinel, M. P. (1976). Applied Solar Energy: An Introduction. Addison-Wesley.(大気を通るときの光の弱まり方の式。式は PVEducation「Air Mass」の紹介によります)
  3. Bird, R. E. & Riordan, C. (1986). Simple Solar Spectral Model for Direct and Diffuse Irradiance on Horizontal and Tilted Planes at the Earth's Surface for Cloudless Atmospheres. Journal of Climate and Applied Meteorology, 25(1), 87–97. https://doi.org/10.1175/1520-0450(1986)025<0087:SSSMFD>2.0.CO;2
  4. NOAA Global Monitoring Laboratory. General Solar Position Calculations. https://gml.noaa.gov/grad/solcalc/solareqns.PDF(日の出・日の入りは、太陽の高さ−0.833°として計算)
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