2026年9月26日、TITANOTA BASEの Underground AGAVE SEMINAR で「アガベにとって光とは? — 植物育成LEDで原産地の光に近づけるには?」という講義をしました。この記事は、当日のスライドの流れに沿って、図と出典をつけて読み物に直したものです。

結論を先に

  • 光は「PPFD(瞬間の強さ)」と「DLI(1日の量)」で測ります。育成のDLIの目安は、原産地の年平均にあたる42前後。環境が合えば70〜80を目指す使い方もあります。
  • 地上に届く太陽光の色の配合は、メキシコでも日本でもほぼ同じです。日本に足りないのは冬の「量」と「時間」で、東京の12〜1月の屋外の光は、アガベ・オテロイの原産地の約半分しかありません。
  • 成長は「水 × 温度 × 光」の掛け算です。光だけを増やしても、水と温度が足りなければ育ちません。
  • まずは、ライトの強さ(PPFD)と点灯時間を記録し、株に届いているDLIを計算するところから始めてください。Agave Lightなら、ルクス計の値 ÷ 54 でPPFDに換算できます。

1. 植物にとって光とは?

光は「エネルギー」と「情報」

光には二つの役割があります。

  • エネルギー: 光合成は、CO₂と水から糖を作る反応です。その動力は光だけです。水と肥料があっても、光がなければ体は増えません。
  • 情報: 植物は光の色・量・方向・長さを、光受容体という専用のタンパク質で読んでいます。赤と遠赤はフィトクロム、青とUV-Aはクリプトクロムとフォトトロピン、UV-BはUVR8が受け取ります。この情報で、伸びるか締まるか、気孔を開くか、いつ休むかを決めています(Casal 2013)。

PPFD: 1秒間に届く「光の粒」の数

光は、光子という小さな粒の流れとして葉に届きます。光合成は光子1個ずつで反応が進むので、植物にとって大事なのは光のエネルギーの大きさではなく「粒の数」です。

PPFD(光合成光量子束密度)は、1秒間に1m²へ届く、400〜700nmの光子の数です。単位は μmol/m²/s です。晴天の正午でおよそ2,000あります。紫外線と遠赤は、この数には入りません。

PPFDは「1秒間に1m²へ届く光子の数」。雨にたとえると雨の強さ
PPFDは「1秒間に1m²へ届く光子の数」。雨にたとえると雨の強さ

雨にたとえると、PPFDは「雨の強さ(mm/時)」です。その瞬間の強さなので、時刻や雲、ライトからの距離で刻々と変わります。

DLI: 1日に降った光の合計

DLI(日積算光量)は、1日に届いた光子の合計です。雨で言えば「1日の雨量」にあたり、単位は mol/m²/日 です。

  • DLI = PPFD × 点灯時間(時間) × 0.0036
  • 例: PPFD 1,270(Agave Light 24W を40cmで使ったときの中心の値)で8時間点けると、1,270 × 8 × 0.0036 = 36.6 mol/m²/日
  • 例: PPFD 890 で12時間なら、890 × 12 × 0.0036 = 38.4 mol/m²/日

グラフで見ると、DLIは「PPFDの時間変化の面積」です。太陽は朝夕が弱く正午に強い山の形、LEDは一定の強さの長方形になります。

DLIはPPFDの山(または長方形)の面積
DLIはPPFDの山(または長方形)の面積

同じくらいのDLIでも、「強く短く」と「弱く長く」は別物です。ライトの距離と点灯時間は、両方を記録しておくことをおすすめします。

ルクスではなくPPFDで測る理由

スマホの照度計で測れるルクスは、「人の目にどれだけ明るく見えるか」の物差しです。目の感度が高い緑〜黄色を重く数え、青や赤は軽く数えます。一方、植物は青や赤の光子もよく使います。そのため、青や赤の強い育成ライトは、ルクスでは実際より暗く出ます。逆に、緑は目に明るく見えるので大きく出ます。

ルクスは人の目の感度で重みづけした値。青と赤は小さく出る
ルクスは人の目の感度で重みづけした値。青と赤は小さく出る

植物の体は「空気と水」でできている

植物の体は、乾いた重さで見ると約96%が炭素・酸素・水素でできています。炭素はすべて空気中のCO₂から、酸素と水素はCO₂と水から来ます。窒素・リン酸・カリウムなど土から吸う肥料の成分は、残りの4〜5%です(Epstein 1972。割合は植物によって多少違います)。

植物の体は空気と水からできている
植物の体は空気と水からできている

1640年代、ファン・ヘルモントは2.3kgの柳の苗を90kgの土に植え、5年間水だけを与えました。柳は約77kgに育ちましたが、土は57gしか減りませんでした。増えた重さは、土ではなく空気と水から作られていたのです。

光合成は「光のエネルギーを糖に変える」反応

光合成は、次の2段階で進みます。

  1. 光反応: 光のエネルギーで水を分解し(ここで酸素が出る)、「化学エネルギーの小口」(ATPとNADPH)に変える。
  2. カルビン回路: その小口を使って、CO₂を糖に組み立てる。この段階は光を直接使いませんが、光反応が止まれば数分で燃料切れになります。
光合成の2段階
光合成の2段階

肥料は「機械」、空気と水は「材料」、光は「電気」

植物の体を、糖を作る工場にたとえると分かりやすくなります。

工場 植物 中身
機械 肥料(特に窒素) 光を受け止める葉緑素と、CO₂を糖に組み立てる酵素(ルビスコなど)。窒素はこの機械の部品で、葉緑素1分子に窒素が4つ含まれ、ルビスコは葉の窒素の2〜3割を占める(Evans 1989)
材料 空気と水 体の9割以上は、空気中のCO₂と水から作られる。水は体の中を巡る運び役も兼ねる
電気 光 機械を動かす唯一の動力
  • 届いた光のうち、体になるのは数%です。この「電気」が細ると、何を足しても体は増えません。
  • 肥料が少ないと機械が少なく、光が少ないと機械が動きません。
  • 光不足のまま窒素を足しても、機械ばかり増えて動かないので、色の濃い徒長株になりやすくなります。
  • 水は、肥料の成分を葉へ、糖を根や新しい葉へ運びます。ただし吸った水の大部分は蒸散で出ていき、材料になるのは一部です。アガベは夜だけ気孔を開くので、同じ体を作るのに必要な水が普通の植物の5〜10分の1で済みます。
  • アガベは、作った糖を葉の繊維と、芯にためる果糖の重合体(フルクタン)に振り分けます。締まった株姿も、厚い葉も、鋸歯も、糖から作った構造です。

光は情報: 4つの光受容体

受容体 感じる光 測っているもの 決めること
フィトクロム(phyA〜E) 赤 660nm / 遠赤 730nm 赤と遠赤の比率(R:FR)。近くに他の植物があるか 伸ばすか締めるか(避陰反応)、発芽、開花時期、温度感知
クリプトクロム(cry1, cry2) 青・UV-A(350〜500nm) 青の量。昼か夜か 徒長の抑制、開花、体内時計の合わせ込み、葉の展開
フォトトロピン(phot1, phot2) 青・UV-A 光の方向と強さ 光の方へ曲がる、葉緑体の移動、気孔を開く
UVR8 UV-B(280〜315nm) UV-Bの有無と量 日焼け止め(フラボノイドなど)の合成、伸長の抑制、DNA修復
光受容体が読む波長の範囲
光受容体が読む波長の範囲

同じDLI(PPFD)でも、赤が多いか青が多いか、朝夕に遠赤が混じるか、明暗が何時間かで、葉の長さ・厚み・色・気孔の動きが変わります。受容体が光の信号で遺伝子の働きを切り替えているためです。

徒長はフィトクロムの判断

開けた場所の太陽光は、赤(660nm)と遠赤(730nm)の比(R:FR)がほぼ1.15で一定です。他の葉の陰では、葉が赤を吸って遠赤を通すため、この比が0.05〜0.7に下がります。フィトクロムはこれを「隣に競争相手がいる」と読み、茎や葉柄を伸ばします。これを避陰反応といいます(Smith 1982)。「夕陽で徒長する」と言われるのは、朝夕の光がR:FR約0.6と低いためです。ただし、他の植物の陰になっていなければ、それだけで伸び続けることはありません。

開けた場所と他の葉の陰でのR:FRと避陰反応
開けた場所と他の葉の陰でのR:FRと避陰反応

室内の徒長は、光の弱さがいちばんの原因です(陰の信号がなくても、暗ければ植物は伸びます。Casal 2013)。それに加えて、白熱灯の光や、周囲の植物・カーテン越しに入る窓の光は遠赤寄りになり、「陰」と誤認することが重なります。植物育成用のLEDで、適切な強さの光を十分な時間当てれば伸びません。遠赤の少ない赤(660nm)は「開けた場所」の信号です。

締まった株姿は青、UV-Bは「守れ」の信号

  • クリプトクロムは、青い光で伸長を抑え、葉を厚く短くする方向に働きます。
  • 2025年には、アガベの交雑種でも青い光で気孔が開き、光合成が上がることが確かめられました(Sartori ほか 2025)。
  • ただし、青を増やすほど良いわけではありません。割合と光量の組み合わせで反応が変わり、種によって感度も違います。
  • UV-Bは、UVR8を通じて表皮に紫外線を吸収する物質を作らせ、伸長を抑えます。赤みやブルームが強い光で増えるのは、防御の一部です。量が合えば日焼け止めになり、多すぎれば組織の損傷になります。
  • UV-Bと、UV-A・紫(約415nm)は受け取る受容体が違います。「UVで鋸歯が強くなる」とひとまとめにはできません。

「長さ」を読む: 体内時計とCAM

植物には約24時間の体内時計があり、毎日「明るくなった時刻」を合図に時刻を合わせています。その光はフィトクロム(赤)とクリプトクロム(青)の両方が受け取ります。CAM植物では、この時計が「夜に気孔を開いて酸(リンゴ酸)をため、昼に閉じて糖にする」リズムを支えています。光の質が昼夜の代謝の同期に関わることは、別のCAM植物(アエクメア)で示されています(Ceusters ほか 2014)。

点灯時間を毎日ずらしたり、夜に強い光が漏れたりすると、植物の時計が乱れて、夜のCO₂の取り込みが落ちる可能性があります。LEDを使うときの原則は次のとおりです。

  • 点灯する時刻は、屋外の昼と違っても構いません。夜に点けて朝に消す使い方でも問題ありません。
  • 毎日同じ長さ・同じ時刻で点灯する。
  • 暗い時間は、隣のライトや窓からの漏れ光も含めて設計する。

なお、光受容体の知見の多くは、シロイヌナズナや作物で得られたものです。アガベで直接確かめられているのは、青い光への気孔の応答(2025年)と、近縁属のCAM植物の光質への応答までです。

2. アガベと光

アガベも光は必要。CAM植物のしくみ

アガベは夜に気孔を開いてCO₂を取り込み、リンゴ酸という酸に変えて葉にためます。昼は気孔を閉じたまま、その酸からCO₂を取り出し、光のエネルギーで糖にします。「夜に光合成する」のではなく、「昼の光で、夜にためたCO₂を使う」植物です。昼にどれだけ光を受けたかが、次の夜にどれだけCO₂を取り込めるかを決めます。明期の終わりに気孔が開く相もあり、時間帯と植物の状態で反応が変わります。

CAM植物の昼と夜
CAM植物の昼と夜

アガベ属で実際に測られた数字

研究 対象 分かったこと
Woodhouse ほか 1980 A. deserti(自生地) 夜間の酸の蓄積は、葉の面が受ける光が1日約25 molで最大の90%。砂漠の自生地でも光は足りていなかった
Nobel & Valenzuela 1987 A. tequilana 1日22 molで夜間の酸の蓄積が最大の90%
Niechayev ほか 2019 A. americana(4年生) 光飽和点は1日54 mol。生産性の高いCAM種はおおむね30 mol前後。試験のPPFDの上限は1,250
Sartori ほか 2025 アガベ交雑種 青い光で気孔が開き光合成が上がる。C3・C4植物だけでなく、CAM植物のアガベでも青い光の効果が確かめられた

アガベは、1日に20〜30 mol/m²以上の光で「光が足りている」領域に入り、種や株の年齢によってはさらに上まで使えます。ただし、オテロイそのものの最適値を確かめた研究はまだありません。

もう一つ大事な点があります。論文でいう「光が足りている」は、「育つ(CO₂を取り込める)」という意味です。しっかり引き締まった株を作ることを目的にするなら、光はもっと必要になると考えています。そこで次の章から、オテロイの有名な産地の光を基準に、最適な光量を考えます。

3. 原産地オアハカの光

メキシコ・オアハカの場所と気候

Agave oteroi は2019年に新種として記載された種です。基準産地は、プエブラ州とオアハカ州の境を流れるリオ・オンド川の流域で、標高975〜1,160mです(Starr & Davis 2019)。テワカン・クイカトラン渓谷は、シエラ・マドレ山脈の雨陰にあたる半乾燥地で、年降水量は250〜500mm(5〜10月に集中)。アガベの仲間の多様性が世界で最も高い地域です。

項目 値
年平均DLI 41.8 mol/m²/日
月別DLIの幅 35〜48(冬でも35)
昼の長さ 11〜13時間(年間)
年平均気温 約22℃(谷底の標高1,050mに換算)
冬の晴天正午のPPFD 1,640(夏は2,060)
UV-B 東京の約2倍

光の値は、NASAの衛星データ(NASA POWER、2001〜2020年平均)から求めました。衛星の値は約110km四方の格子の平均で、格子には標高4,500m級の山地まで入ります。渓谷の底にある自生地は、この値より明るく暖かい可能性があります。

NASA POWERの格子と原産地の位置
NASA POWERの格子と原産地の位置

目安として、10万ルクスの太陽光(PPFD 約1,850)を6.5時間浴びると、DLIは約43になり、原産地の年平均に届きます。

オアハカとほかの産地の月別DLI

6地点の月別DLI(NASA POWER 2001〜2020)
6地点の月別DLI(NASA POWER 2001〜2020)

オアハカは年間を通してDLI 35〜48です。冬でも東京の夏(35〜39)と同じくらいの光が、毎日11〜13時間あります。

月 DLI(mol/m²/日) 昼の長さ
1月 35 11.0時間
4月 48 12.4時間
6月 45 13.1時間
9月 40 12.1時間
12月 35 10.9時間

正午の最大PPFD

夏至・冬至の正午の最大PPFD
夏至・冬至の正午の最大PPFD
  • 夏の晴天正午は、どの地点も2,000前後です。冬は太陽の高さで決まります。
  • 原産地の冬の正午は、実際の天気で1,430、晴天なら1,640です。東京の冬は880、晴天でも1,040にとどまります。
  • 原産地は冬が乾季で雲が少なく、実際の天気では夏(1,170)より冬の方が明るくなります。
  • 値は1時間平均なので、瞬間の最大値はこれより高くなります。

4. 日本の光

項目 東京の値
年間日照時間 1,927時間(気象庁の平年値)
全天日射量(年平均) 12.7 MJ/m²/日(DLI 約27に相当)
年平均DLI(衛星) 28.8(晴天なら41)
雲量 64%(6月は81%)
1月 4月 6月 8月 12月
DLI(mol/m²/日) 20 35 35 39 17
昼の長さ 9.8時間 12.9時間 14.4時間 13.4時間 9.6時間
正午のPPFD(実天候 / 晴天) — — 1,560 / 2,010 — 880 / 1,040
月平均気温 / 湿度 5℃ / 75% 13℃ / 77% 22℃ / 82% 27℃ / 81% 7℃ / 78%
  • 日本の夏のDLIはオアハカ並みです。問題は10〜3月で、12〜1月のDLIは17〜20と、オアハカの半分しかありません。昼も約2時間短く、気温も低いので、屋外での育成は難しくなります。
  • 室内の窓辺は、ガラス・角度・奥行きで屋外の数分の一から半分に落ちます。冬の室内でLEDなしに原産地並みの光を得るのは、実質むずかしいと考えてください。
  • 日本はオアハカより、夏は暑く湿っていて、冬は寒い環境です。

5. アガベで有名な国の光

地点(緯度・標高) 年平均DLI 最少月 最多月 夏の正午PPFD(実天候 / 晴天) 冬の正午PPFD(実天候 / 晴天) 雲量
メキシコ・オアハカ(18.2N・自生地1,050m) 41.8 35 48 1,170 / 2,060 1,430 / 1,640 48%
日本・東京(35.7N・40m) 28.8 17 39 1,560 / 2,010 880 / 1,040 64%
台湾・Lize(23.9N・35m) 33.0 24 43 1,690 / 2,080 1,190 / 1,380 62%
タイ・バンコク(13.8N) 41.0 37 47 1,750 / 2,020 1,710 / 1,750 68%
米国・アリゾナ(32.2N・1,260m) 42.3 23 61 2,110 / 2,110 1,210 / 1,220 34%
イラン・テヘラン(35.7N・1,180m) 37.3 17 58 2,010 / 2,020 790 / 1,070 44%

DLIと雲量はNASA POWERの2001〜2020年平均、正午のPPFDは同じNASA POWERの2025年の時別データ(夏至・冬至前後10日の1時間平均)です。いずれも水平面・屋外・格子平均(光は1°×1°、気象は0.5°×0.625°)。台湾はLize(麗澤園藝・彰化県田尾郷)を含む格子です。東京は6地点の中で年平均が最も低く、日本のアガベ栽培は、世界の産地の中で光が最も足りない場所で行われています。

6地点の気温と湿度
6地点の気温と湿度
地点 1月(気温℃ / 湿度%) 7月 年
オアハカ(格子平均・1,995m) 13 / 72 17 / 78 16 / 73
同・谷底1,050mに換算 19 / – 23 / – 22 / –
東京 5 / 75 26 / 83 16 / 79
台湾・Lize 17 / 74 27 / 83 23 / 77
バンコク 26 / 64 28 / 81 28 / 74
アリゾナ 8 / 49 27 / 45 18 / 40
テヘラン 3 / 58 31 / 23 17 / 42

気温・湿度は地上2mの格子平均(約55km×66km)で、渓谷や都市部の局地値ではありません。標高の換算は気温減率0.65℃/100mです。原産地は「光は多いが暑くない」場所で、谷底に換算しても年22℃・7月23℃。日本の夏(26〜27℃・湿度80%超)は、原産地より暑く湿っています。

昼の長さと、PAR・UV-A・UV-B(東京=1)
昼の長さと、PAR・UV-A・UV-B(東京=1)
  • 昼の長さ: 緯度が低いほど年間の変化が小さくなります。オアハカは11〜13時間、東京は9.6〜14.4時間です。
  • UV-A: 光全体とほぼ同じ比率で増え、原産地は東京の約1.5倍です。
  • UV-B: 標高と太陽の高さで大きく増え、原産地は東京の約2倍です。

産地ごとの特徴は次のとおりです。

  • 台湾・Lize: 光の量は東京より1〜2割多い程度(33.0 対 28.8)ですが、冬の落ち込みが浅く(最少月24)、1月でも17℃あります。生産地が台湾にある理由は、光より「冬の気温」の寄与が大きいと考えられます。
  • タイ・バンコク: 年間37〜47で最も安定していて、常に暑く、昼夜の気温差が小さい地域です。冬の正午のPPFDも1,700で落ちません。スコールの多い地域です。
  • アリゾナ・テヘラン: 湿度が20〜50%と低く、寒暖差の大きい地域です。夏の光は原産地より強く(月58〜61)、冬は東京並みに落ちます。強い光でも蒸れないのは湿度が低いからで、日本で同じ光を当てるなら、湿度と風を一緒に設計する必要があります。
  • オアハカ: 光は多いのに、暑くありません。格子平均は年16℃(標高1,995mの山地込み)ですが、谷底の1,050mに換算すると年約22℃、最も暖かい4〜5月でも約26℃・湿度60%以下です。日本の夏(26〜27℃・湿度80%超)は、原産地の最も暖かい時期より湿っていて、夜も下がりません。原産地では、アガベが夜にCO₂を取り込みやすい15℃前後に近い夜が続きます。

6. 各国のスペクトル: 色は世界共通

地上に届く太陽光の可視域の形は、国が違ってもほぼ同じです。違いが出るのは「量・UV・散乱・時間帯」の4点です。

  1. UV(特にUV-B)は標高と太陽の高さで増える: 晴天時、UV-Bは標高1,000mごとに+18±2%、UV-Aは+9%、全日射は+8%増えます(Blumthaler ほか 1997)。原産地(標高約1,000m・北緯18°)は、東京(40m・北緯36°)よりUV-Bが多くなります。
  2. 直達光と散乱光の比率: 湿度・雲・エアロゾルが多いほど散乱光が増えます。日本・台湾・タイは影の薄い光、アリゾナ・オアハカ・イランは影の濃い直達光です。同じPPFDでも、下葉や中心への当たり方が違います。
  3. 赤と遠赤の比(R:FR)は国では変わらない: 開けた場所の日中は約1.15で、緯度・季節・天候によらずほぼ一定です。朝夕は約0.6、植物の陰では0.05〜0.7。この比を動かすのは「時間帯と周囲の植物」です。
  4. 時間帯: 太陽が低いほど大気を長く通り、青が散乱で減って赤みが増します。朝夕の色の変化は世界共通です。
6地点の晴天正午スペクトル(モデル計算)
6地点の晴天正午スペクトル(モデル計算)

晴天の正午の太陽光をモデルで計算すると、光子の割合は青27〜28%・緑35%・赤36〜37%で、原産地・東京・台湾・アリゾナでほぼ同じでした(SPCTRAL2 モデル。入力は標高・水蒸気量・エアロゾル・オゾンで、実測ではありません)。R:FRも1.1〜1.2で、国による違いはほとんどありません。違いはUV-B(原産地は東京の約2倍)と、全体の量です。

夏至の正午 青 緑 赤 R:FR
オアハカ 27.7% 35.4% 36.2% 1.14
東京 27.3% 35.4% 36.6% 1.16
台湾・Lize 27.5% 35.4% 36.4% 1.18
アリゾナ 28.2% 35.3% 35.8% 1.09

LEDで再現すべきは「国ごとの色」ではなく「量と時間」です。色は、育てたい株姿の目的で決めます。

7. LED育成のすすめ

冬の日本の穴を埋める

東京の12〜1月の屋外DLIは17〜20で、原産地(35〜48)の約半分です。窓辺ではさらに落ちます。原産地並みの光と11〜13時間の昼を室内で作れる現実的な手段は、LEDです。

冬の日本の光と、LED 1灯8時間の比較
冬の日本の光と、LED 1灯8時間の比較

ただし、光だけで解決するわけではありません。日本の夏は光より温度と風が、冬は光と温度が主役になります。光を増やす前に、根が動いているか、葉が熱くなっていないかを確かめてください。

距離と点灯時間の早見表(Agave Light 24W)

中心のDLI(mol/m²/日) 6時間 8時間 10時間 12時間
30cm(PPFD 1,790) 38.7 51.6 64.4 77.3
40cm(PPFD 1,270) 27.4 36.6 45.7 54.9
電気代/月 約130円 約180円 約220円 約270円

太字は、オアハカの年平均DLI(41.8)を超える組み合わせです。

  • 30cmなら、8時間ほどの照射でオアハカの光量を超えます。
  • 点灯時間を原産地の昼の長さ(11〜13時間)に合わせるなら、40cmでの使用がおすすめです。
  • 育成棚の高さや電気代に合わせて選んでください。

値は公表されている中心のPPFDから計算しています。電気代は1kWhあたり31円、30日で計算しました。

この早見表は Agave Light 24W の値です。より強い光が必要な場合や、距離を取って使いたい場合は Agave Light 32W もあります。

この記事を読んでくださった方への割引: 2026年9月27日(日)23:59まで、Agave Light 24W・32Wが 10%オフ になります。会計でクーポンコード LEDLECTURE を入力するか、次のリンクから進んでください。割引はカート・お支払い画面で反映されます。24Wを割引で見る / 32Wを割引で見る

成長 = 水 × 温度 × 光(Nobelの環境生産性指数)

アガベ研究の第一人者ノーベルは、アガベがどれだけ育つかを「水の指数 × 温度の指数 × 光の指数」の掛け算で予測できることを示しました(Nobel 1984)。それぞれの指数は0〜1の値で、1は「その要因が成長を制限していない」状態です。

環境生産性指数(EPI)の3つの指数
環境生産性指数(EPI)の3つの指数
  • 足し算ではなく掛け算です。光が1でも、用土が乾いて水が0.2なら、全体は0.2 × 1 × 1 = 0.2になります。
  • 自生地の A. deserti では、月ごとの新しい葉の出方がこの指数とよく一致しました(r²=0.93、強い相関)。
場面 水 温度 光 指数
冬の窓辺(暖房あり) 0.8 0.8 0.4 0.26
冬の室内+LED 0.8 0.8 1.0 0.64
夏の屋外(東京) 0.9 0.6 1.0 0.54
未発根の株+強いLED 0.2 0.8 1.0 0.16

表の数値は考え方を示すための仮の値で、オテロイで測ったものではありません。

「ライトを変えたのに育たない」ときの多くは、光だけを上げて、水と温度の指数が低いままになっています。栽培では「光・水・風」とよく言われますが、研究では「光・水・温度」に着目しています。アガベ部屋が暗いときに、夜の温度に目を向けるのも一つの切り口です。

設置を決める順番

  1. 根の環境: ライトをしっかり当てるのは、しっかり発根してから。
  2. 葉の位置でPPFDを測る: 成長点付近の値を測ります(Agave Lightなら、ルクス計の値 ÷ 54 でも構いません)。
  3. 点灯時間とDLI: 原産地の昼(11〜13時間)を一つの基準に。距離を近づけて時間を短くするのも一つの方法です。
  4. 葉温と新しい葉を見る: 白くなる・傷む・新しい葉の展開を確かめます。
  5. 一つずつ変える: 光・水・肥料を同時に変えない。

育たないときは、根が動いているか、前の環境との差が大きすぎないか、葉が熱くなっていないか(光防御が働いているだけなら傷害ではありません。熱いならサーキュレーターで熱を逃がします)、水分と温度が合っているかを確かめてください。

使用例: 照射時間と距離

愛用者の方々の5つの使い方を、DLIの面積(PPFD × 時間 × 0.0036)で比べました。5枚とも縦軸の目盛りをそろえています。

Agave Lightの使用例ごとのDLI(24W・32Wの30cmは公表値、32Wの13cm・20cmは実測の中心の値)
Agave Lightの使用例ごとのDLI(24W・32Wの30cmは公表値、32Wの13cm・20cmは実測の中心の値)
使い方 中心のPPFD DLI(mol/m²/日)
24W・30cm・7時間 1,790 45.1
24W・30cm・12時間 1,790 77.3
32W・30cm・10時間 2,348 84.5
32W・20cm・7時間 4,123(実測) 103.9
32W・13cm・7時間 5,510(実測) 138.8

比べる目安は、オアハカの年平均41.8、快晴の日で49.8です。使用者の中には、DLI 70〜80で育てている例もあります。

強い光ほど、葉温と新しい葉の白化・褐変を確かめてください。強い光を当てるときは、少しずつ近づけて限界を探ります。いきなり近づけると、葉が焼けることがあります。

これらの値を、各国の月別DLIのグラフに重ねると次のようになります。LEDは季節によらず同じ値です。

各国の月別DLIと、Agave Lightの使用例のDLI
各国の月別DLIと、Agave Lightの使用例のDLI

Agave Lightは太陽光と同じ係数でルクスを換算できる

Agave Lightのスペクトルを実測して太陽光と比べると、形は違う(LEDには山がある)ものの、青・緑・赤の光子の割合はほぼ同じでした。

太陽光とAgave Lightのスペクトルと、色ごとの光子の割合
太陽光とAgave Lightのスペクトルと、色ごとの光子の割合
色 太陽光 Agave Light
青(400〜500nm) 27.6% 27.7%
緑(500〜600nm) 35.3% 34.9%
赤(600〜700nm) 36.4% 37.4%

Agave Lightは、アガベをコンパクトに育てることを狙って青・紫のスペクトルにピークを持たせ、光合成に使われやすい赤にもピークを持たせています。それでも光全体の青・緑・赤の割合は、太陽光とほぼ同じになるように設計しています。

そのため、目の感度で重みをつけたルクスとの比も太陽光と同じになり、PPFD ≒ ルクス ÷ 54 で換算できます(実測では53)。例えば10万ルクスなら、PPFD 約1,850です。ただし、この換算はスペクトルが太陽光に近いライトだけに使えます。赤や青の強いライトは係数が大きく違います。

今日の結論

  1. 光を測る指標として、PPFDとDLIを使おう: 育成のDLIの目安は42程度。環境が合えば、70〜80も目指してみてください。
  2. 成長 = 水 × 温度 × 光: 水・温度・光のどれが欠けてもうまくいきません。「温度」の視点も意識してみてください。
  3. 育成環境を記録してみよう: 光の強さ(PPFD)と照射時間を記録し、株にどのくらいのDLIが当たっているかを計算してみてください。Agave Lightなら、ルクス ÷ 54 で計算できます。

まずは、ご自身の株の位置の光量と点灯時間を一つ記録するところから始めてみてください。

まだ分からないこと

  • オテロイの光の飽和点(いまは近縁種の値を借りています)
  • オテロイの最適な夜温
  • 赤み・ブルーム・鋸歯と、光の色や量との関係

これらは、育てている方々の記録が集まるほど分かってきます。

この記事で使ったライト

  • Agave Light 24W: 1株を30〜40cmから照らす使い方に。30cm直下の中心のPPFD 1,790(公表値)
  • Agave Light 32W: より強い光が必要な棚や、距離を取りたい場合に。30cm直下の中心のPPFD 2,348(公表値)

2026年9月27日(日)23:59まで、クーポンコード LEDLECTURE で上の2機種が10%オフになります。リンクから進むと自動で適用されます(割引はカート・お支払い画面で反映されます): 24W / 32W

参考文献

  • McCree KJ (1972) Agricultural Meteorology 9:191–216. 作物の作用スペクトル
  • Thimijan RW, Heins RD (1983) HortScience 18:818–822. 光の単位の換算
  • Rizzini L ほか (2011) Science 332:103–106. UVR8
  • Rai N ほか (2019) Journal of Experimental Botany 70:4975–4990. クリプトクロムとUVR8の相互作用
  • Epstein E (1972) Mineral Nutrition of Plants. Wiley. 植物の元素組成
  • van Helmont JB (1648) Ortus Medicinae. 柳の実験
  • Zhu XG, Long SP, Ort DR (2008) Current Opinion in Biotechnology 19:153–159. 光合成の理論効率
  • Emerson R, Lewis CM (1943) American Journal of Botany 30:165–178. 光合成の量子収率
  • Evans JR (1989) Oecologia 78:9–19. 葉の窒素と光合成
  • Casal JJ (2013) Annual Review of Plant Biology 64:403–427. 光受容体と避陰反応
  • Kinoshita T ほか (2001) Nature 414:656–660. フォトトロピンと気孔
  • Jenkins GI (2017) Plant, Cell & Environment 40:2544–2557. UVR8総説
  • Smith H (1982) Annual Review of Plant Physiology 33:481–518. R:FRと避陰反応
  • Holmes MG, Smith H (1977) Photochemistry and Photobiology 25:533–538. 日中と朝夕のR:FR
  • Snowden MC, Cope KR, Bugbee B (2016) PLOS ONE 11:e0163121. 青と緑の光への応答
  • Sartori HL ほか (2025) Theoretical and Experimental Plant Physiology 37:31. アガベ交雑種と青色光
  • Ceusters J ほか (2014) Journal of Experimental Botany 65:3705–3714. CAMと光質
  • Woodhouse RM, Williams JG, Nobel PS (1980) American Journal of Botany 67:1179–1185. A. deserti の受光と夜間の酸蓄積
  • Nobel PS, Valenzuela AG (1987) Agricultural and Forest Meteorology 39:319–334. A. tequilana
  • Nobel PS (1988) Environmental Biology of Agaves and Cacti. Cambridge University Press
  • Nobel PS (1984) Oecologia 64:1–7. 環境生産性指数(EPI)
  • Nobel PS, Hartsock TL (1986) Oecologia 68:181–185. A. deserti の生産量の予測と実測
  • Nobel PS (1991) New Phytologist 119:183–205. CAMの生産性と水利用効率
  • Niechayev NA ほか (2019) Journal of Experimental Botany 70:6549–6559. A. americana の光飽和点
  • Starr GD, Davis TJ (2019) Cactus and Succulent Journal 91:134–143. Agave oteroi の記載
  • Blumthaler M, Ambach W, Ellinger R (1997) Journal of Photochemistry and Photobiology B 39:130–134. 標高とUV
  • Bird RE, Riordan C (1986) Journal of Climate and Applied Meteorology 25:87–97. 太陽光スペクトルモデル SPCTRAL2
  • Kromdijk J ほか (2016) Science 354:857–861. 光防御
  • Nishiyama Y ほか (2001) EMBO Journal 20:5587–5594. 光阻害と修復
  • NASA POWER(power.larc.nasa.gov)Climatology 2001–2020 / Hourly 2025
  • 気象庁 平年値(東京 1991–2020) / Kew POWO / UNESCO 生物圏保護区
  • AgaveLives: Agave Light 24W/32W 公表値、HPCS-330Pによる実測(2026-09-25)、講師ノート(2026-09-08)

図はすべてAgaveLivesが公開データと自社の測定から作成したもの、写真は自社撮影です。